世田谷一家殺害事件考察(1) プロの犯行か,素人の犯行か?
プロの犯行か,素人の犯行か?
世田谷一家殺害事件の情報をネットで検索していると,噂話として「韓国の元軍人」「米軍兵士」といったプロフェッショナルの犯行ではないかという推測が出てきます。今回は実行犯がプロか素人かについて考えてみましょう。
■凶器
(1) 刺身包丁 関孫六 銀寿
宮澤みきおさん殺害に使用されたのは,刃渡り21cmの刺身包丁でした。
商品名「関孫六 銀寿」柳刃包丁 (刃体21cm、柄部分を含めた全長34cm)福井県内の業者が、平成12年6月に1,500本製造したもので関東地区46店舗では、1丁3,500円前後で販売された。
テレビ朝日の番組で寿司屋の主人が語っていたように,刺身包丁は引いて使う道具であり,対面した相手に対する凶器としては不向きです。
写真をご覧いただくと分かるように,柄と刃がほぼ同じ縦幅であり,もし突く・刺すといった用途で使用すれば容易に手が滑り,自らの手を傷つけてしまうことが分かります。
実際に,犯人は宮澤みきおさん,泰子さん,にいなちゃん殺害時に手を怪我して流血していたことが分かっています。
(2) 宮澤家の文化包丁
宮澤みきおさん殺害時に刺身包丁(関孫六)の先端が折れてしまいましたが,そのまま3Fのロフトにいる泰子さん,にいなちゃんを殺害しようと試みました。その際,泰子さんの腕に多数の防御創があること,にいなちゃんの歯が折れていたことなどから,刺身包丁で切りつけるだけではなく殴る等の暴行を加えたと考えられています。
その際,激しい抵抗にあったこともありますが,刺身包丁(関孫六)が折れていたことも相まって,泰子さんに致命傷を与えることが出来ず,一旦,2Fに降り,宮澤家の文化包丁を使用して再度泰子さんとにいなちゃんを刺して殺害しました。
この泰子さん・にいなちゃん殺害の経緯を見る限り,少なくともロフト襲撃時の犯人の手元には第二の凶器が用意されていなかったことになります。(もし第二の凶器があるならば,それを使えばより確実に殺害可能だったはずですが使わなかったことから。)
※注:monazite氏のブログに第三の凶器仮説が書かれています。第一の凶器(持参した刺身包丁)は折れ,第二の凶器(宮澤さん宅の文化包丁)は変形して使い物にならなくなったため,一家殺害後一度自宅に帰り第三の凶器を持って再侵入した可能性です。
■実行犯は限りなく素人に近い人物
私は実行犯は素人だと考えています。その理由は以下の二点です。
(1) 一家殺害に対する高い計画性に対し,不釣り合いな準備不足
本事件は一家全員を殺害する周到性が垣間見えます。いわゆる「流し」の可能性は低く,計画的な犯行ということです。もしプロフェッショナルであれば,全員殺害すると決めたならば様々なシナリオを想定し,複数の凶器を用意するはず。
足が付きやすい特殊なナイフを避けて,一般的な包丁を凶器として選択することも考えられますが,「包丁が1本だけしか手元にない」状況に陥らないように複数用意するでしょう。
したがって,殺害計画に対して,かなり甘い楽観的な見通ししか持っていなかったと言わざるを得ません。
(2)凶器の選択ミス
よりによって刺殺に不向きな刺身包丁を選んでしまったという点から,実行犯は兵士(特にナイフによる格闘)としての訓練は受けていないと考えられます。また,刃物に対する知識に乏しいことから,ナイフマニアでも,日常的に料理をする環境にもいなかったと考えられます。(料理をしていれば,刺身包丁より文化包丁や出刃包丁を選ぶはず。)
また,殺人事件は世田谷一家殺害事件以前には未経験だと考えられます。世田谷一家殺害事件以前に動物虐待事件が続いており,事件後にぴたりと止まったという話もありますが,実行犯はせいぜい小動物を傷つける程度の犯行しか経験していなかった,そのために人を殺害する大変さを知らなかったと考えられます。
以上,実行犯は殺人に関しては素人(刺殺ははじめて)であり,また共犯者として主犯が存在していたとしても,その共犯者も適切にアドバイス出来ていない時点で素人に近い二人組程度だと考えます。兵士や犯罪集団や強盗集団と行った,プロの犯人グループ的な犯人像は浮かんできません。